Abstract
本稿では、近年の日本における博物館行財政に関する7つの最新動向について説明する。
①学芸員養成課程の拡充(8科目12単位→9科目19単位)が図られ、2012年4月の大学入学生から新しい学芸員養成制度がスタート。②2011年「公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準」を全面改正し、私立博物館もその対象に含めるなど、博物館としてより水準の高い内容に拡充。③ICOMの倫理規程を踏まえ、2012年7月に日本博物館協会によって「博物館の原則」及び「博物館関係者の行動規範」を制定。④2011年3月、いわゆる美術品国家補償法が制定され、アジア諸国で初めて美術品の国家補償制度を導入。また、いわゆる美術品の差し押さえ等防止法も制定され、日本で初めて國立故宮博物院の大型展覧会の開催が可能になった。⑤2008年より日本博物館協会で「美術品梱包輸送技能士」の資格制度の試行が始まった。⑥東日本大震災により、引き続き被災地における文化財レスキュー活動が行われているが、プルーシールド委員会等、常置の専門家ネットワークの形成に向けて、引き続き検討。⑦2001年の国立博物館の独立行政法人化以降、毎年一律マイナス1%の運営費交付金の削減がなされ、剰余金を自分で使えないなどの問題があり、制度の見直しに向け検討中。